今日は、少し基礎技術よりのおハナシです。
すごく小さい振動を、AIで解析して、家電などの稼働状態を検知することができました!という内容が、以下のTech Xploreさんの記事に乗っていました。
「Device tracks house appliances through vibration, AI」
この記事の中でも、特に技術的に大事な(面白い)文を訳していきますね。
レーザでカベや天井の振動を計測 => AIで処理
第2パラグラフの一文です。
The device, called VibroSense, uses lasers to capture subtle vibrations in walls, ceilings and floors, as well as a deep learning network that models the vibrometer’s data to create different signatures for each appliance.
“subtle vibration” = “微細な振動” です。これは、辞書を調べるとすぐに分かると思います。
“signatures” ですが、”特徴” “痕跡” “同定するための目印や情報”という意味で使われています。家電が動くときに、ガタガタなのか、コトコトなのか振動に特徴があるわけです。
“signature”というと、日常生活のなかでは、サイン(署名)ということで、欧米ではその人固有の筆跡なのですが、家電の振動もそれぞれ固有の振動パターンで見分けることができるという語感ですね。
“appliance” = 電化製品、器具、装置。ここでは電化製品です。
なお、IT関連でアプライアンスというと、ファイアウォールサーバ、キャッシュサーバ、プリントサーバなどで、汎用サーバではなく、その機能に特化したサーバをアプライアンスサーバなんてよく聞きますね。
少し長いので、主語、動詞、目的語にマークを付けておきますね。
以下のようなイメージです。
(主語)The device [, called VibroSense,] (動詞)uses (目的語1)lasers (副詞句1)to capture [subtle vibrations in walls, ceilings and floors], as well as (目的語2)a deep learning network (副詞句2)that models the vibrometer’s data to create different signatures for each appliance.
主語はdevice(デバイス), 動詞はuse(使う)。
デバイスが使うものは目的語1のlasersと目的語2のdeep learningの2つですね。
ピンクとオレンジ
の部分は長いですがそれぞれ、laserとdeep learningを修飾している句です。
では訳しちゃいますね。
=再掲=
The device, called VibroSense, uses lasers to capture subtle vibrations in walls, ceilings and floors, as well as a deep learning network that models the vibrometer’s data to create different signatures for each appliance.
=直訳=
そのデバイス ーバイブロセンス (VibroSense)と呼ばれているー は、カベや天井や床の微細な振動を捉えるためのレーザおよび、電化製品ごとに異なるパターンを作成するために振動計のデータをモデルするディープラーニングネットワークを使う。
関係代名詞を文法通りに訳出すると、判りにくいですね。
そもそも、英文が少し論理矛盾ありそうです。
そのデバイス(バイブロセンス)がディープラーニングを使うというのは、チョットおかしいですね。(そんなに頭の良いデバイスなのだろうか?)
ちょっと意訳も含めると以下のようになると思います。
=意訳=
バイブロセンス (VibroSense)というデバイス・システムは、レーザをカベや天井や床の微細な振動を捉えて、その振動データからディープラーニングを使って、電化製品ごとに特長のあるパターンを作成する。
動詞”model”の訳し方が合っているか自信がありません。そもそも動詞”model”の英文における使われ方が、正確なのだろうか...。
似たような振動が、別の部屋であっても大丈夫。カベを透過するときのパターンも考慮に入れているようです。
第5パラグラフの文です。
In order to detect usage across an entire house, the researchers’ task was twofold: detect tiny vibrations using a laser Doppler vibrometer; and differentiate similar vibrations created by multiple devices by identifying the paths traveled by the vibrations from room to room.
“twofold” = “2要素”、”2つ折り”、”2倍”などです。(私は初めて見ました...)
=直訳=
研究者のやることは2要素で、小さな振動をレーザドップラー振動計を使って検知すること、そして部屋から部屋への振動を使って通過した通路を同定し、それによって複数のデバイス(この場合applianceであろう)から発生する類似の振動を差別化すること。
なんとなく分かったでしょうか?
英文としては、あまり難しくないと思いますが、後半部分は、書いてあることが少し不明確な記述が多いので、物理現象を正確に表してないようにも思いますが、以下のようなイメージです。
想定している状態は、2つの同じ種類の電化製品が有ったとして、それぞれ個別に動作を知りたい。
電化製品は別々の部屋にあるので(*1)、部屋から部屋へ移動するときの減衰特性(原文ではvibration)が判れば、どの部屋で発生した音か、特定できる
と言いたいのですね。
*1: 同一電化製品が別々の部屋にあるお宅で調査したんだと想像しますが、
技術的におもしろいので、あえてこの文を取り上げました。
記事を読んでの雑感
マンションだとプライバシー問題になりそう
記事にも書いてありますが、当面は一戸建て専用ですね。(発売されても我が家では使えません。)
集合住宅だと、周りの住戸の振動も拾ってしまい、お隣さんが何をしているか筒抜けですね。
住んだことないですが、江戸時代の長屋みたいです。
スマートスピーカと接続して、より便利に
未だ製品化というわけではないのですが、将来的にはアレクサやグーグルスピーカと連動して、家の状態を常に理解しつつ、ユーザの問いかけ(ニーズ)をより正確にとらえることができるようになりそうですね。
構造物の振動ではなく、音声ではだめなのでしょうか?
カベや天井の微小振動から、いろいろな家の状態がつかめるようですが、マイクで収音した音声データでも同様なことが出来そうに思いました。
カベや天井の振動を使うメリットは書いていないのですが、音にならない低周波振動も収集したいという欲求が、あったんだと思います。(筆者想像)
原理的にはアレクサなどのAIスピーカでも実現できると思われます。ので、アマゾン、グーグルには、われわれの生活は「オ・ミ・ト・オ・シ」かと考えると、ちょっとコワイですねぇ。
以上、最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
なお、わたしが英文を読み書きする際に使っている、アルクのウェブ辞書「英辞郎 on the WEB」の紹介を以下のページに書いています。お時間ある方は覗いてみてください。