わたしが知らなかっただけですが、3Dプリンタで成型した金属部品が、航空宇宙品質になったんですね!!
今回は、3Dプリンタで作ったパーツが、宇宙船のフェアリングに使えるかトライをするという記事です。
ひと昔前は、3Dプリンタで金属を成型すると、「小さいスキマができてNG」的なハナシでしたが技術が進んだようです。
ググってみると、金属3Dプリンタの手法はタクサンあるみたいで、そのあたりのウェブリンクも本文中に貼っておきました。
興味ある人は見てみてください。
本日はTechCrunchさんのウェブページです
「 Lockheed picks Relativity’s 3D-printed rocket for experimental NASA mission」
この記事のポイント
3Dプリンタで作るのは、積載物のフェアリング
“フェアリング”と言われて、ピンとくるでしょうか?
ググって調べたところ、以下のようなパーツを指とのことです。
ロケットに何か積載しますよね?
それはむき出しだといけないので、何かでおおっておくのですが、それをフェアリングと呼ぶようです。
フェアリングは、機体側および積載物側、双方の形状などの要求仕様に合わせてエンジニアリングが必要なので、有る程度、設計変更に対する自由度が必要なパーツのようです。
なぜ3Dプリンタで作るのか? 早い!フレキシブル!
3Dプリンタで製作するメリットは、以下の2点です
-納期が短くできる(鋳型・金型製作が不要、材料入手期間が短い)
-複雑な形状を、1つのパーツで製作しやすい
開発要素が多い、宇宙船では、3Dプリンタを使うことにより、より短納期にロケットが出来るようです。
のちにリンクを貼った、リレイティビティ社のウェブページには”raw material to flight in less than 60 days”と書いてあります!(ホンマかいな!)
3Dプリンタであれば、2ヶ月程度あればできてしまうんですね。
従来方法であれば、特急料金払っても数カ月
従来の金属部品の作り方は;
板材を曲げたり接合したり、もしくは鋳造削り出し、強度が弱くても良ければ鋳造したり、いずれかの方法で製作してました。
従来法の問題は、時間がかかるということです。
金属部品の製作時間の、イメージを書いておきますね。
-鋳造ならどんなに早くても1か月
-鍛造削り出しもどんなに早くても 10日前後はかかります
鋳造は極端な例ですが、鋳型を製作して、さらに鋳込み工程、仕上げ工程があるため、どんなに早くても1か月はかかります。(さらに、鋳込み工程の順番待ちがあるため、大きなパーツでは、数ヶ月- 十数ヵ月マチが当たり前です!)
鍛造削り出しでも、大きなパーツを作るには、だいたいの形の素材を、鍛造屋さんに発注して、鍛造屋さんは原材料を確保して、それからようやく製作開始となります。鍛造屋さんで材料がすぐ確保できたとして1週間、削り出し工程で数日といったところが最速です。(大きなパーツは、各工程の順番待ちが長くかかります。)
3Dプリンタを使って金属部品を製作するのは、リレイティビティ社
英文記事のタイトルには「ロッキードが..」とあるので、ロッキード社が製作、外注したのかと思いましたが、宇宙関連スタートアップの”リレイティビティ社”が、ロッキード社のプロジェクトに部品を供給するようです。
リレイティビティ社ってどんなカンジの会社か、調べてみました。
なんとリレイティビティ社は、自分たちでも”テラン1(Terran1)”というロケットを開発中で、2021年の年末くらいに打ち上げできるようなスケジュールのようです。
見ると判りますが、3Dプリンタで作ったロケットは部品点数がメチャ少ない
ということがわかりますね。(旧来型の1%未満!!)
Relativity space社、テラン1のページ
https://www.relativityspace.com/terran
テラン1の打ち上げ予定は、2021年の年末ですねぇ。
およそ1年後ということで、未来のロケットのテストに期待です!
でも、2020年2月の記事には2020年のミドルと書いてあったので、どの程度遅れるか、定かではありませんが...。
Startup on quest to 3D-print rockets now has a second launch site on the California coast
https://www.theverge.com/2020/6/24/21300782/relativity-space-launch-site-air-force-base-terran-1-rocket-3d-printing
“..Terran 1 currently scheduled for the end of 2021.”
CNBCのニュースでも取り上げられています。
Inside Relativity Space’s 3D-printing rocket ‘factory of the future’
https://www.cnbc.com/2020/10/07/inside-relativity-space-hq-3d-printer-rocket-factory-of-the-future.html
2021年は、どうなっているか、楽しみですね!
すぐに宇宙船に使われるわけではない
最初に読んだときは、「もう使われるのか?」とビックリしましたが、NASAのTipping Point Program(*1)
*1:なんと訳せばよいか判りませんが、直訳すると”転換点プログラム”というところでしょうか?新規技術をいろいろ試して、革新技術を宇宙開発で促進するということだと思います。
https://www.nasa.gov/directorates/spacetech/solicitations/tipping_points
直ぐ上に書いたように、リレイティビティ社のロケット、テラン1は来年打ち上げ予定で、技術的には確立しているように思います。
金属3Dプリンタのバリエーション
金属3Dプリンタを少し調べたので、ウェブページのリンクを、英文和文両方張っておきますね。
Methods of 3D Metal Printing
https://www.spotlightmetal.com/methods-of-3d-metal-printing-a-679124/
金属3Dプリンターの種類(方式)
http://www.j3d.co.jp/business/index37.html
リレイティビティ社の3Dプリンタが、どの方式をさいようしているんでしょうかねぇ。
記事の翻訳解説です
記事本文としてはとびとびですが、比較的重要な文を選んで翻訳していきますよ。
構文としては、平易に書かれているので、直接訳しますね。
3Dプリントのロケットは、NASAのタッピングポイントプログラムの趣旨に合致する
まずは、以下のパラグラフを訳していきますね。
The launch startup’s 3D-printed rockets are a great match for a particularly complex mission Lockheed is undertaking for NASA’s Tipping Point program.
英単語・語句
bag a contract: 契約をとりつける
tipping point: 転換点、転機
undertake: 請け負う、企てる、着手する、保証する、約束する
個別文の解釈です
文はシンプルなので、直接訳してしまいますね。
=意訳=
ロケット打ち上げスタートアップ(=リレイティビティ社)の3Dプリンターで作ったロケットは、NASAのティッピング・ポイント・プログラムで、ロッキード社が請け負っているとりわけ複雑なミッションに非常に相性が良い。
そのミッションとは、極低温の管理システムをテストすることだ
次の文です
The mission is a test of a dozen different cryogenic fluid management systems, including liquid hydrogen, which is a very difficult substance to work with indeed.
英単語・語句
bag a contract: 契約をとりつける
tipping point: 転換点、転機
undertake: 請け負う、企てる、着手する、保証する、約束する
個別文の解釈です
こちらの文もシンプルなので、直接訳します。
=意訳=
そのミッションとは、多数の極低温流体をテストするというもので、流体には実に(扱うのが)難しい液体水素も含まれている。
3Dプリンターで金属部品を製作すると、納期は非常に短くなる!
3Dプリンターは納期が短くなることを説明しています。
“With our 3D-printed approach we can print the entire fairing in under 30 days,” Ellis said.
“………..
Even though the mission is three years out, there will always be last-minute changes as you get closer to launch, and we can accommodate that. Otherwise you’d have to lock in the design now.”
個別文の解釈です
こちらの文もシンプルなので、直接訳します。
=意訳=
“3Dプリンターを使えば、フェアリング全体を30日で印刷できるんだ。”エリスは言った。
“………ミッションは3年後だけれども、おそらく直前の変更はロケット発射が近づくとあり、われわれはその変更に対応できる。そうでなければ、今すぐ設計を固定する必要がある”
おわりに
今回のページはいかがでしたか?
3Dプリンタの技術は日進月歩のようで、そのうち宇宙船の外壁や圧力隔壁などの耐圧部材にも使う時がくるのでしょうか?
本記事の主役のリレイティビティ社の、テラン1はどうなんでしょうかね。
パーツの納期は早いと思いますが、命を預けるとなると、溶接の欠陥が少し心配ですよね...
以上、最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
なお、わたしが英文を読み書きする際に使っている、アルクのウェブ辞書「英辞郎 on the WEB」の紹介を以下のページに書いています。お時間ある方は覗いてみてください。
